薬局M&Aは「実績と業界知識」が成功の条件
弁護士・薬剤師 赤羽根秀宜様
赤羽根秀宜様
弁護士・薬剤師 中外合同法律事務所
約10年間の薬剤師経験の後、弁護士に転身。薬剤師の経験を十二分に活かし、調剤過誤や医薬品医療機器等法(旧称薬事法)・薬剤師法などの問題を取扱う傍ら、執筆や講演活動なども多数行っている。
弁護士の立場からより良い医療を目指し、日々業界に貢献している。
最近、薬局を取り扱う仲介会社が急増しましたが、現場の事情や薬局ならではの法的リスクを十分に分かっているかどうかは甚だ疑問です。業界の慣習まで良く分かっている仲介会社でないと、取り返しのつかない状況に追い込まれる可能性があります。
弁護士の視点から、薬局M&Aにはどのようなリスクがありますか?
やはり一番は、処方箋が止まってしまうリスクでしょうね。ドクター、家主、従業員など、様々な利害関係者がいますが、M&Aに反対された場合の対処法や、万が一実際に止められてしまった場合の対策も検討しておく必要があります。そのためにも、それらの知識を十分に持ち合わせたアドバイザーにお願いすることが成功の条件だと思います。
どのようなアドバイザーを選ぶかは、薬局業界の実績と経験値で判断すべき
対処法はもちろん、ドクターに反対させないための十分な事前準備も仲介会社に求められる最低限のノウハウですよね。赤羽根先生でしたら、どのようなアドバイザーをお勧めしますか?
M&Aアドバイザーの見極めは、会社規模や信用力だけではなく、薬局業界の実績と経験値で判断するべきだと思います。薬局M&Aの豊富な実績数はもちろん、個別指導のポイント等実際の薬局業務の問題点まで分かる仲介会社は、他にはなかなかないですよね(笑)。薬局M&Aの経験がここ数年という仲介会社が殆どで、実際に処方箋が止まってしまった話も散見されますから、業界の人間として大変危惧しています。
中には、ノウハウがないために、譲渡先企業紹介後は関知せず、といった仲介会社も見受けられます。譲渡先を熟慮するのは当然ですが、どのようなアドバイザーを選ぶかも同じくらい大切です、と言いたいですね。まあ、もし何か紛争になった場合は、私にご相談頂ければ(笑)。
譲渡契約の内容にも十分留意しなければなりませんね。
そうです。特に、直接大手企業と交渉される場合は、M&Aにおいて百戦錬磨の法務部や顧問弁護士と戦うわけですから、条文の内容が大手企業 (買い手側)に有利な文言になっていても、容易に見極めが出来ませんし交渉も難航します。例えば、譲渡後の競業避止義務や疑似リベートへの対応などは、特に気を付けなければならないポイントです。
譲渡後紛争になることもありますか。
譲渡前に適切な対応が出来ていなければ紛争になり得ますし、場合によっては、訴訟に発展するケースもあります。譲渡後に揉めないためにも薬局のM&Aに長けた弁護士、もしくは薬局の慣習や細部までを熟知したアドバイザーにお願いすることをお勧めします。